悠冴紀

2018年9月14日

詩『黒い雨』

最終更新: 2023年2月24日

空が泣いている

深く 深く

傷を負った空が
 

 

 
黒い涙を頭上から散らし
 
夜の大地に染みていく
 

 
雨が降る
 
見える者にのみ見える泥づいた黒さで
 
鋭い雨が降りしきる
 

 
警告のように

罰のように
 
汚れた大地を打ち付けて
 

 
何が空を切り裂いたのか……
 
昨日の不実か

明日の残酷さか
 

 
知っていたはずだ
 
私たちは証人
 

 
忘れてはならない
 
加担した
 

 

 
雨が見える
 
黒ずんだ雨が
 

 
空は不気味に赤黒く濁り
 
見覚えのある闇を垂れ込める
 

 
あの闇こそ

すべての起点
 

 
あの黒さ あの濁りを忘れては
 
道はたちどころに見失われるだろう
 

 
光は闇の中から生み出され
 
闇は光を得て初めて形を成す
 

 
雨を見つめる
 
黒い雨を
 

 
やがて訪れる白い朝と
 
表裏一体の黒い雨を――

Photo by Saeki Haruka

※2012年10月の作品
 

 
注)この作品を一部でも引用・転載する場合は、必ず『詩「黒い雨」(悠冴紀作)より』と明記してください。自分の作品であるかのように公開するのは著作権の侵害に当たります!

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