悠冴紀

2018年5月4日

詩『No Home』

最終更新: 2023年2月24日

私は人の子にあらず
 
とうに自ら放棄した
 

 
後悔はない
 
今は常に満たされている
 

 
家族はいない
 
二度といらない
 

 
母とは大地
 
父とは大気
 

 
私にはそれで充分だ
 

 

 
帰るべき生家はない
 
なくていい
 

 
すべてを宿しながら
 
何者をも囲わない無限の宇宙
 
里と呼ぶに相応しい唯一の場
 

 
皆はじめから

そこにいたのだ
 

 

 
影は智
 
光は力
 

 
思えばずっと
 
そう生きてきた
 

 
子にはならぬが

親にもならず


 
ただ学び

ただ諭して――


 

 
私に雨をくれ
 
濁った雨を
 

 
私に風をくれ
 
斬るような疾風を
 

 
それがむしろ
 
歓びになる
 

 
雲よ
 
屋根の真似をしなくていい
 

 
木立よ
 
私を護らなくていい
 

 
ここにはむしろ
 
地の利がある
 

 
責任ある自由と
 
後ろ盾なき独走
 

 
求めたすべてが集約されて
 
こうした今をもたらした
 

 
これが唯一の

帰るべき家


 

***********


 

 
※2012年5月の作品
 

 

 
注)この作品を一部でも引用・転載する場合は、必ず「悠冴紀作『No Home』より」と明記してください。自分の作品であるかのように公開するのは、著作権の侵害に当たります!

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