悠冴紀

2016年10月1日

詩『ZERO』

最終更新: 2023年2月24日

雪が降り積もる

枝から舞い落ちた枯れ葉の上に
 
すべてを無に返す白い雪が
 

 
この終わりは
 
旅の始まり
 

 
束の間の平穏に中断された
 
忘れかけていた歩みの再開
 

 

 
遠くへ行くよ
 
本来の私に相応しい彼方
 
どこでもない枠組みの外側へ
 

 
築き上げたものを自ら打ち壊し
 
あるべき道のため

初期化する
 

 
そうして何度も再生してきた
 

 

 
接した人々の瞳の中で
 
私の背中が消えていく
 

 
白く不透明な霧の彼方へ
 
私はあえて

消えていく
 

 

 
── 舟が見える
 
霧に霞んだ一艘の舟が
 

 
音もなく漕ぎ出し
 
湖面の彼方へ消えていく
 

 
後ろに残してきたものの記憶は
 
やがて詩に変わるだろう
 

 
靄に包まれ

情緒深く薄れ
 
時が静かに折り畳んでいく
 

 
色を失くした木の葉は大地に還り
 
新たな芽吹きをもたらすだろう
 

 
別れは旅立ち
 
そして躍進
 

 
目の前の『今』が2つに分かれ
 
昨日が遠く離れていく
 

 
リセットすべきときが

やってきた
 

 
振り出しに戻り

ゼロから再び歩み出す
 

 
湖水に流れた私の木の葉も
 
やがては詩に変わるのだろう
 

 
接した人々の記憶の中
 
霞のかかった昨日を背景に
 
白い風に紡がれて……
 

 

 
私は原点へと立ち返る
 
すべてを初期化し

今再び
 

 
そこは旅の後に帰るべき場所
 
そして旅の前にいたはずの場所
 

 
旅が始まろうとしている
 
昨日のすべてに別れを告げて
 
新たなる 続きの旅が ──


 
************

※2013年12月作
 

 

 
この時期、実生活でちょっとした変化があり、
 

 
転機を迎えるにあたって心境を綴ったのが、この作品です。

終わりの始まり。その繰り返しと積み重ねが、まさに人生という螺旋状の旅なのかもしれませんね。

注)この作品を一部でも引用・転載する場合は、必ず『詩「ZERO」悠冴紀作より』と明記してください。自分の作品であるかのように公開するのは、著作権の侵害に当たります!
 

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