悠冴紀2019年6月8日詩『鮫々のように』暗く 冷たい 水の中で 独り静かに佇んでいたい 冷ややかな眼差しを持つ あの鮫々のように 笑うことなく 馴れ合うことなく 誰も寄り付かないほどの深みに溺れて…… 差し伸べる手など 必要ない 人々が救いと信じるものが 私には死だ 現に私は 日に日に崩れ 朽ち果てて...
悠冴紀2018年9月14日詩『黒い雨』空が泣いている 深く深く 傷を負った空が 黒い涙を頭上から散らし 夜の大地に染みていく 雨が降る 見える者にのみ見える泥づいた黒さで 鋭い雨が降りしきる 警告のように 罰のように 汚れた大地を打ち付けて 何が空を切り裂いたのか 昨日の不実か 明日の残酷さか……
悠冴紀2018年4月2日詩『γρύψ(グリュプス)』ありがとう さようなら 今おもむろに この大地を離れ いつかのように羽ばたいていくから どうか皆 私を手放して あの懐かしい アッシュブルーの空 何者をも囲わない 私なりの故郷へ 記憶とともに 解き放って―― 誰かを受け入れる腕ばかりが成長し いつの間にか 翼が退化してしま
悠冴紀2017年12月15日詩『氷の道標』蒼白い雪を被った鋭い針葉樹林を 私は手探りで駆けていく どこから来たのか どこに向かっていたのか 時折わからなくなる自分がいる 今はそれでも 走るほかない 凍てついた樹海の奥から 狼の遠吠えが聞こえてくる あれは血に飢えた冬の捕食者 かつての私に 似た奴らだ 目印もない