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  • 執筆者の写真悠冴紀

詩『氷の道標』

更新日:2023年2月24日


蒼白い雪を被った鋭い針葉樹林を 私は手探りで駆けていく どこから来たのか どこに向かっていたのか 時折わからなくなる自分がいる 今はそれでも 走るほかない

凍てついた樹海の奥から 狼たちの遠吠えが聞こえてくる あれは血に飢えた冬の捕食者 かつての私に 似た奴らだ 目印もない雪原の上 私には君だけが道標だった 君の雪山に語りかけ 木霊する声の反響で 己の立ち位置を知ることができた 身動きできない君に代わって 私は大地を駆け回り この身で捉えた世界を伝えた

            ひょうびょう 黄金色に暮れていく縹渺とした冬空に 君と歩んだ月日を重ね見る

粉々に舞い散る冷厳とした氷雪に 君からの戒めを顧みる あれが友情でなく信頼でもなかったなら 私たちの関係は一体何だったのか…… 君が先だったか 私が先だったか 霧に閉ざされた大気の中 どちらかが視力を失って以来 足を引っ張り合うだけの関係に堕ちてしまった 私は君にとって何だったのか…… もはや私には知る手だてもない 確かなのは 一つだけ 四半世紀もの間 君は私の道標だった 君に代わる存在など 後にも先にも見出せはしない 君は今も道標 私たちは二人とも みなしご

樹海を彷徨う氷の孤児 せめて二人の軌跡だけは汚れぬよう 私は君との記憶を凍結した 氷の木々から樹液を搾り 琥珀のごとく固めて埋めた 地中深くに掘った穴で 君の欠片を留めていく 溶けない氷をそのままに 褪せることない記憶の中で――

※2013年2月作 作中の『君』は、以前UPした天狼~ハティ」「」「君に贈るもの」「SPHINX」「幽霊といった作品群の『君』と同じ人物、幼馴染の親友Sのことです。

この親友のことを書いた作品は、これからもまだまだ無数に登場してきますので、辛抱強くお付き合いくださいませ m(_ _)m A^_^;) 何しろ、私にとっては、これまで出会った中で最も影響力の強かった人物 ── 私を今の私たらしめた最重要人物ですから。その関係がすっかり過去となった今でも尚、良くも悪くも。

※下の曲は私がこの詩を書くときによく聴いていた曲、

ケイシー・ストラットンの「Midwinter」です。皆さんも是非BGMにどうぞ▼

注)この作品を一部でも引用・転載する場合は、必ず「悠冴紀作『氷の道標』より」と明記してください。自分の作品であるかのように公開するのは、著作権の侵害に当たります!!


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