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  • 悠冴紀

「屍」


かつて私は 曲がりくねった獣道を行き 摩擦と衝突を繰り返していた そこでは多くが生み出され 破壊され また多くの新しいものが誕生した 活火山に囲まれた荒海のように わかっていた 本当は 今の私は偽者だ 真に生きていたのは 記憶に遠いあの時分だけ 今以上の不真実の数々に囚われながらも たった一つの紛れもない本物の関係が 奥行きと真実味を与えていた ここ何年もの間 自分で自分に言い聞かせてきた 目の前にあるニセモノがホンモノで 失われた過去こそニセモノだったのだと 自分自身を欺く 最悪の嘘だ 血の通わぬ毎日 魂の喪失者同士が繰り広げる マネーゲームに 人生ごっこ 嘘にまみれた打算づくの交わり…… なんと薄っぺらな現状なんだ 偽者の寄せ集めが築き上げた 眼前のおぞましき共同体 無力な個々人は道化を演じ 幻想に応えて装うほかない あまりに長い間被り続けてきた 主義にも反する浅はかさの仮面 自己は磨り減り 腐食して 気づけば窒息してしまっていた わかっていた 本当は 唯一無二の本物の関係が その躍動と濃密さゆえに自壊して以来 私はずっと 死んでいた 失われた自己を取り戻すため 私は再び偽装を解いた だが少しばかり 遅過ぎたらしい 未だ出口は見えないまま 自らが築いた不真実の数々に取り囲まれて 本来の歩き方すら思い出せない 私は何を望み 何を誇りとし 何を目指してきた人間だったか 尊厳のため闘おうとした戦士の魂は 一体どこへ消えてしまった… 動きやまないあの海の躍動は 一体どこへ…… 視界に広がるのは ただ 静まり返った死海ばかり 波打たぬがゆえに 衝突もなく 浅はかさゆえに 安心を買う 多くの偽者に 求められて 血の通わぬ日々 進化も発展も実りもない大地 今の私は 屍だ

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※2014年10月作。 最近ちと色々ありまして、鬱傾向と無縁な私には珍しく、 陰気な思いに駆られていたので、それをそのまま詩にしてみましたA^_^; 毎度ながら夏中躁状態で遊び回っていたから、その反動かもしれませんが…(笑) ま、これもある種のデトックスってことで、ご了承ください。。。m(_ _)m 注)私の作品を一部でも引用・転載する場合は、必ず『悠冴紀作』と明記してください。   自分の作品であるかのように公開するのは、著作権の侵害に当たりますm(__)m


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