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  • 悠冴紀

山岸涼子展


京都国際漫画ミュージアム 山岸涼子展
山岸涼子展 厩戸王子「日出処天子」より

 

先日、京都国際マンガミュージアムで開催中の 山岸涼子展 に行ってきました。

この展示会では、後の聖徳太子こと若き日の厩戸王子(うまやど おうじ)を描いた『日出処の天子』や、感動の傑作バレエ漫画『テレプシコーラ ‐舞姫‐ 』等で知られる漫画家、山岸涼子さんの原画や関連資料等が、初期の頃にまで遡って展示されています。

── はい、そうです。

大好きなんですよ、この人の作品!!

私は姉から譲り受けた『日出処の天子』がきっかけで、すっかりこの人の世界観にハマってしまったんですが、その後、他の連載ものや短編集なども色々読み漁るようになって、「ま、漫画の域を超えている ( ゚Д゚)!! 下手な文学よりも切り口が鋭く奥が深くて、ズッシリ響くな~ (*_*; 」と、読む度いい意味で衝撃の連続でした。

この人の描く世界観というと、シビアで生々しくグロテスクで、生半可な覚悟では読み切れないような情け容赦のない世界観が殆どです。少女漫画と言いつつ、世の未成熟な少女たちが胸に抱きがちな 地に足のつかないロマンの類いは、一切出てきません。(← 一見そういう典型的な少女たちの妄想系の設定が出てくるとしたら、最後には必ずと言っていいほど、その淡い夢物語を根底から覆し、ものの見方を一変させてしまうような末路・解釈が描かれます:苦笑)

多くの人々が楽な道を選ぼうと、あえて目を背けたり思考停止したりして、表面的なところで満足してしまいがちな物事や人間について、これ以上はないという深淵まで徹底的に掘り下げて、果ての果てまで突き抜けていくからこそ、やがて見えてくる驚くべき示唆や真理。舞台設定がどの時代のどの国であれ、また たとえ日常からは かけ離れたホラー設定やファンタジー設定の寓話であれ、強烈なインパクトでこの現実世界へとリンクする、ハッと目の覚めるような展開の数々。そんな壮絶な作品群だからこそ、他では決して味わうことのできない究極のカタルシスを味わうことができるのだと思います。

言うまでもなく、異端中の異端。そして天才の中の天才です!!

厩戸王子『日出処の天子(山岸涼子)』

さて、ここまでは、文学系の物書きのサガで、ストーリーに関する話ばかりしてきましたが、漫画文化の素晴らしいところは、頭でものを考えるばかりでなく、目で観て素直にその美しさを堪能するという楽しみが、同時に用意されている点でしょう。写真や映像とはまた別の技術・創造力が必要とされる、人間ならではの表現の世界です。

デビューして間もない初期の頃のイラストは、ちょっと私の苦手なタイプの、瞳がウルウルとした「いかにも少女漫画!」という描写でしたが、それも小さく印刷された本の1コマとしてではなく、原画として間近に見ると、溜め息が出るような繊細なタッチで細かいところまで描き込まれていたりして、見え方が変わりました (*_*) やっぱりこの人は半端なく凄い!!と、改めて畏敬の念を抱きました。ただ精緻で美しいとか、技巧を凝らしてあるとかいうだけでなく、物語の中での人物設定と見事にシンクロしていて、こういうバックグラウンドを持ったこういう人物には、もうこの顔・この姿しかあり得ない、というような必然性をひしと感じられるのが、これまた凄い!! 人相学的な正確性とでも言うのでしょうか? 私なりの解釈というか想像ですが、ここまで驚異的に中身と切り離せない相貌を描ける人というのは、おそらく人物像と外見的特徴とが、そのままごっそりと同時に閃く人なのだろうな、と思います。狙って計算の上で「こういう容姿にすれば効果的かな」などと試行錯誤するのではなく、直感的に。

ちなみに、今回の原画展で私が個人的に一番楽しみにしていたのは、やはり思い入れの深い『日出処の天子』の主人公、厩戸王子です ☝ 若き日の聖徳太子こと厩戸王子を、愛に飢えた孤独で残忍な魔性の存在として描いた人物描写にも驚かされましたが、彼にとっての蘇我毛人を、政治的にではなく、むしろ極めて個人的・精神的な理由で重要な人物とした異例の設定は、衝撃的でした。冷酷なのに、毛人(えみし)に対してだけは純粋でひたむきな想いを寄せる厩戸王子の意外な一面は、その女人のごとき美しい容姿とともに、読み手の心を鷲掴みにします。でも同時に、純粋でひたむきであるがゆえに、成就しない想いそれ自体がみるみる魔性に堕ち、彼自身の身をも呪うような妄執へとすり替わっていく様は、怖いというより むしろ切ない。最良になり得たはずの関係が、最悪へと転がり落ちていった果てに待ち受ける明日とは、果たしてどんなものなのか……?

これ以上のネタバレは いたしかねますので、物語の内容が気になる人は、是非一度読んでみてくださいね (^_-)-☆

それにしても、この中性的で妖艶な厩戸王子の描写、本当に濃やかで美しく、斬新ですね。

紙幣や教科書や寺院で目にしてきた聖徳太子像からは、想像もしなかった姿です (*_*)

ローラ・チャン「テレプシコーラ(山岸涼子)」より

厩戸王子のほかに、私が特に期待していたのは、バレエ漫画『テレプシコーラ -舞姫- 』に登場してくるローラ・チャン ☝ の原画です。主役はこの人とは別の姉妹で、このローラは常に他者の視点からある程度の距離をおいて客観的に描かれているのですが、登場回数が少ない割に、圧倒的な存在感で読み手を釘付けにし、忘れがたい印象を残していく人物です。ただ目で観て美しい美形キャラ、というだけではなく、その仕草や行動一つ一つが、まるで実在の人物であるかのような人間臭い力強さで、観る者を励まし、勇気づけ、深い感動をもたらすのです。(当初は「厩戸王子に顔が激似」という意見もあったようですが、実際に内容をちゃんと読んでみると、こういう人物なら、もうこの顔この姿で登場してくる以外にないな、と思うような山岸涼子さんらしさ、逆に言えば、この相貌や仕草などからプロファイリングすれば、自ずとこの設定そのままの人物像やバックグラウンドに行きつくな、という必然性を感じられるので、私目線には全く違和感がなく、物語を読み進めるにつれ、厩戸王子と似ているかどうかなんて発想自体どこかに完全に吹き飛んでしまっていました (^^;) )

ローラ・チャンの後ろ姿『テレプシコーラ(山岸涼子)』
ローラ・チャン『テレプシコーラ(山岸涼子)』

 

しかーしっ!!

大いに期待していたこのローラ・チャンの原画は、展示会場に僅か一枚しか見られませんでした Σ( ̄ロ ̄lll) それも、「え? よりにもよってこのワンシーンって、なんで???」という微妙~な1ページがピックアップしてあって、ちょっと拍子抜けしてしまいましたw ローラのファンは私以外にも大勢いて、人気の高い登場人物だろうと思っていたんだけどな~…… www 😞

是非ともカラーの大きな絵で観たかった!

残念!! ( ノД`)シクシク

山岸涼子展での戦利品

左上の画像▲は、あとでミュージアムのショップで購入したイラスト集(ポストカード形式)なんですが、ここにも何故か、ローラ・チャンの姿は見当たらず・・・w どれもこれも、主役というか視点となっていた姉妹のイラストばかりでした。もちろん、それも全部綺麗だし、素晴らしいと思いますが、せめて一枚ぐらいはローラ・チャンのイラストも載せてほしかったなぁ…と思いました (´;ω;`)

ちなみに、右側の画像 ↗ は会場で販売していた作品の一つ。他にも数冊、私がまだ読んだことのない作品があったので、その場で大人買いしてきました (^^;) おかげでこれからの楽しみが増えました♪

ところで、上に載せた3枚の画像▲は、山岸涼子展の帰りに立ち寄ったお店の和スイーツです ( ´艸`)

まず、錦市場で漬物を買って帰ろうと思っていたときに、偶然見つけて入ったお店が、黒豆の専門店北尾というところです。雑誌や観光サイトでも紹介されたことがあるそうですが、私たちはそんなことは露も知らず、前知識なしに飛び入り入店。自分で石臼を引いて作る黒豆きなこをまぶして食べるみたらし団子は、素朴で香ばしく飽きない味わいでした♪ 暑くて無性にグリーンティーが欲しかったので、あわせて注文。隠れ家的ないい休憩処が見つかって、良かったです♪

3枚目 ↗ の画像は、これまでにも何度か訪れたことのある茶房華心という甘味どころ。

祇園方面、川端四条にある鼓月の喫茶コーナーで、店頭販売のショーケースを通り過ぎた奥にひっそりと佇む隠れ家スポットです。毎回注文してしまう冷やし抹茶善哉は、たっぷりと濃厚な抹茶に白玉と大納言小豆が浮かぶ控えめな甘さが好きだったのですが、今回は何故か小豆が多すぎて、底まで全部平らげたらすっかり胸焼けしてしまいました (;^_^A 甘いものが好きな人にはちょうどいいのかもしれませんが、あっさり仕立てを好む私の舌には、ちょいと甘みが勝ちすぎていましたw (←って、底の方の小豆を皆まで食べずに、程々のところでやめておけばいいだけだったのかもしれませんけどね:笑)

まあ、そんなこんなで、

贅沢三昧に目も舌も満足して、血糖値を上げまくって帰ってきた久々の京都再訪でした~(笑)

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