悠冴紀2017年6月17日巡礼~廃墟の蛍荒野から荒野へ 廃墟から廃墟へ 誰も訪れなくなった場所を訪れ 乾いた風景を眺め歩く そこはかつて川のあった場所 あとから塗り込められた灰色のコンクリートも 今は朽ち果て さながら墓地の佇まい 川辺を舞っていたあの蛍たちは 一体どこへ消えたのか・・・ 二度とは戻らぬ夏の灯火
悠冴紀2017年3月4日Rebirth雪化粧を解いた露わな大地 氷を割りしだいた碧い大河 深い眠りから今 目が覚めた 己の鼓動に耳を傾け 内なる泉の脈を聞く 銀盤の空を仰ぎ見て 濃緑の翼を背中に開く 迸る飛沫は何のためだったか ようやく記憶が戻ってきた……
悠冴紀2016年12月31日大蛇の亡骸透き通るような白い大蛇が 長い体で周りを取り巻いていた まるで夢殿を守るかのように 怯えた人々の銛を受けた大蛇は それでも土地を抱いたまま 香しき朝に力尽きた その亡骸は 神々が地上に落とした涙のように透き通り 幻のように朝陽に溶けていった 後に生み出された静寂は 水の質感
悠冴紀2016年11月5日愛とは……愛に飢える者を大勢見かける 孤独を避けるためだけに誰かを求め 愛する以上に愛されようとする けれど愛とは相互のもの 己だけのためには 成り立たない 愛を賛美する者を大勢見かける 旋律に載せ 色彩を加え 世界中で謳われる けれど愛とは諸刃の剣 憎しみ以上に相手を傷つけ 凄まじ